「突然ですがキリギリス」
[エッセイ]
1986年 集英社
〜まえがき〜
僕は自分でいうのも何だけど、ヒトミシリなのだ。
瞳・尻ではない。「人見知り」なのだ。
どうも初対面の人とはうまく話ができない。おまけに、人がたくさんいる所に出たりすると、たちまちかたくななサザエと化して、ツボ焼きにでもされない限り出てこれなくなってしまう。
(中略)
おかげで初めて会った人たちには「無口ですね」といわれることが多い。
で、でも無口っていったら、まるで口がたたないみたいじゃないか。お化けと違うんだぞ。
僕に「無口ですね」なんていうのは、黒人に「黒いですね」というようなもんで、それは失礼なことなのだ。
おまけに「無口」とレッテルが貼られてしまうと、ろくなことがないのを、僕はよく知っている。
(中略)
”僕は人見知りです”
と弁明の場をもてたのは、人生始まって以来の経験じゃないかと思う。これだけで今晩はぐっすり眠れそうである。
(中略)
ともあれ、始まってしまえばなかなか止めることのできない物語なのである。
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